素材を生かしておいしく健康!

減塩食生活のコツ

福島県にはラーメンやソースカツ丼、焼きそばなど、おいしいグルメがいっぱい。
名店のラーメンのスープなんて、つい飲み干したくなりますよね。
でも、ちょっと待ってください。塩分、摂りすぎていませんか。

〈プロフィール〉本田よう一先生
料理家、栄養士。高校卒業後、専門学校にて栄養士の免許を取得。フリーカメラマンとして活動後、2006年から料理家として仕事を開始。野菜をたっぷり使い、素材の味を活かしたレシピを得意とし、家族みんなで楽しめる味付けに定評がある。

塩分はからだに必要なものですが、摂りすぎると、高血圧など、さまざまな健康リスクにつながります。
かといって、薄味だとおいしく感じにくい場合も…。そこで、今回は福島県出身の料理家で栄養士でもある本田よう一さんに、塩分を控えても、おいしくバランスよく食べるコツについてお話を伺います。

1 塩分はからだに不可欠なもの。でも…

―そもそも塩分とは、私たちのからだにとってどのような成分ですか?

はじめに「塩分」と「塩味」はイコールではないことを知っておいてください。「塩味」は味覚で感じる、塩の味のこと。一方、「塩分」は食塩の主成分である「塩化ナトリウム」のことを指します。塩分はからだの中で細胞を正常に保ったり、神経や筋肉の働きを調整したりなど、生きていくうえで欠かせない働きをしています。でも、摂り過ぎると、血液の中のナトリウム濃度が高くなって喉が渇きます。それで水分を摂取すると、体内の塩分濃度が調節される一方で、血液量が増え、血管を圧迫することで高血圧になってしまいます。血管や心臓へ圧力がかかった状態が続くと、その圧力に抵抗しようとして壁が厚く、硬くなってしまい、脳梗塞や心筋梗塞などの引き金となる動脈硬化が起きてしまうのです。

2 1日の塩分摂取量の目安は?

―それで、塩分は摂りすぎに注意なんですね。

はい。不足しがちな野菜は1日350g食べることが目標になっていますが、塩分はいろんな食材に含まれており、日常的な食事でも塩分が不足することはまずありません。真夏の炎天下で大量の汗をかくような熱中症のリスクがある場合などを除いて、わざわざ摂取する必要はないのです。平成28年の国民健康・栄養調査によれば、福島県民の塩分摂取量は、1日当たり11.9g、女性9.9g。全国平均が男性は10.8g、女性は9.2gですから、全国的にも高い傾向が見られます。さらに公益社団法人日本WHO協会によれば、成人の食塩摂取量を1日5g未満にすれば、血圧が低下し、脳卒中や心血管疾患などのリスクを下げることにつながると報告しています。WHO加盟国は、2025年までに世界の人々の塩分摂取量を30%削減することで合意しているほど、減塩が大きなテーマとなっています。

健康につながる野菜の食べ方について詳しくはコチラ!

3 無理のない減塩のコツ

―でも、塩分を減らすとおいしく感じにくいです…。

外食や市販の加工食品は味が濃くなりがちで、それに慣れると、塩味を感じにくくなります。でも、最初に塩分と塩味はイコールではないとお伝えしたように、塩分を抑えても、調理法次第で塩味を十分感じられたり、塩味以外の風味でおいしく食べられたりします。減塩のポイントを、大きく5つご紹介します。

1.旬の野菜、果物を食べる。

旬のものはうまみが強く、香りも芳醇です。塩分がなくてもおいしく召し上がれると思います。

2.香味野菜をうまく使う。

にんにく、しょうが、ねぎなどを味のベースに入れることでうまみがぐっと増して、おいしく感じやすくなります。他にもわさび、からし、マスタード、カレー粉、唐辛子、山椒やこしょうも上手に使ってみてください。

3.塩分が強い料理は少量にして

みそ汁は日常から食べる回数の多い料理です。しかし、味付けがしっかりしているのでその液量をまずは減らしましょう。150mlを食べていたら、100mlにすれば、溶くみその量も減らすことができます。可能なら、お椀もサイズダウンすると見た目も寂しくならずに満足度も上がります。

4.酸味を生かす

男性は特に苦手な方もいる方と思いますが、きつい酸味ではなく、隠し味程度に入れると味が引き締まり、酢の旨味も加わります。他にもレモンやゆずなどの柑橘の風味も加わるとより味わいも複雑になり、おいしく感じやすくなります。

5.とろみ、粉をまぶす。

肉や魚には味が絡みやすくすると塩気を感じやすくなります。
これは粘性があることで舌に塩気が残りやすくなり、少量の塩、しょうゆ、みそなどでも味を感じやすくなります。

4 例えば、こんなメニュー

―そうしたポイントを生かせるメニューには、例えば、どんなものがありますか。

それでは、定番の豚肉の生姜焼きを、減塩のポイントを踏まえて調理してみましょう。

<材料>2人前 1人前の塩分量1.4g

豚ロース薄切り肉 6枚(150g)
玉ねぎ 1/2個(100g)
しょうが 2片(20g)
サラダ油 大さじ1
A(しょうゆ、酒、水 各大さじ1
  酢、砂糖、片栗粉 各小さじ1) 
キャベツ 大1枚(100g)
トマト 小1個(100g)

<作り方>
1.豚肉は脂肪と赤みの間に切り込みを入れておく。
玉ねぎはくし形切りにする。しょうがは半量はすりおろし、半量はみじん切りにしておく。Aを混ぜ合わせておく。
キャベツは千切りにし、水にさらして、水気をきる。トマトはくし形に切る。

2.フライパンにサラダ油大さじ1/2を入れて玉ねぎを入れる。
中火で2分ほど炒めて取り出しておく。フライパンにサラダ油大さじ1/2を入れて、豚肉を重ならないように入れて、中火で2分焼き、返す。

3.しょうがのみじん切りを入れて香りが出るまで炒めて、
Aをもう一度よく混ぜて入れて肉に照りが出るまで煮詰める。玉ねぎを戻してさっと炒めたら、器に2を盛り付けて、みじん切りのしょうがを上か散らす。キャベツとトマトを添える。

このレシピの減塩のポイントは大きく3つです。一般的な調理法だと、豚の生姜焼きは一人前2.0g~2.8gくらいの塩分量となりますが、以下の点を生かせば、半分から7割くらいまで塩分を減らしながら、おいしく食べられます。

1.しょうがに2つの役割を持たせ、それぞれに合った切り方にします。炒める際に全体的な広がりを持たせるものはすりおろし、爽やかさと食感をプラスする仕上げの薬味としてはフレッシュなみじん切りにします。
2. 調味液に酢を入れて、うまみと味を引き締めます。 片栗粉を入れることで味を絡みやすくします。
3. 付け合わせのキャベツやトマトには味つけをせずに、肉を食べたあとに口を一度リセットすることでより塩気が感じやすくなります。

最後に、生活習慣病予防というと、バランスのよい食生活が大切だと言われますが、なかなか実践しにくいという方もいるかもしれません。そんな方は、まずはいろんな食品を食べることを心がけると、結果としてバランスが取れてくると思います。減塩は日々できる健康づくりの一つです。毎日、毎食やろうとするときっとつらいときもあるはずです。朝ごはんだけとか、2日に1回と頻度を変えながら、じんわりと取り組んでみてください。ラーメンや漬物もおいしいです。全部をやめる必要はないので、自分の生活の中で、できる範囲で続けていくと味覚が少しずつ、鋭敏になり、より少量の塩分でもおいしく感じることができるようになります。福島の旬の野菜や果物をよりおいしく食べるためにも減塩してみてはいかかでしょうか?

5 さいごに

減塩につながる考え方から具体的な調理のポイントまでについて、本田よう一先生にお伺いしました。無理なく実践できそうなこともあったのではないでしょうか。福島県にはおいしい食材がいっぱいあります。素材の味を生かしながら、ぜひ減塩を始めてみてください。

さらに、福島県では栄養バランスの改善、野菜たっぷり、おいしく減塩の3つのポイントに配慮した「ふくしま健康応援メニュー」紹介しています。
ふくしま健康応援メニューについて詳しくはコチラ!

また、食育ランチョンマットも制作、配布し、主食、主菜、副菜、汁物をバランスよく食べることを推奨しています。
ぜひご利用ください。

この機会に、ぜひこれらも利用しながら、減塩、バランスのとれた食生活を実践していきましょう!

ランチョンマットについて詳しくはコチラ!